July 28th, 2018

Design

猫たちの声に耳をすます

Journalist

TAKASHI KATO

どうして猫たちはダンボール箱が大好きなのだろう。そんな安っぽい箱に入らなくてもいいのに、と思い、ふわふわした、居心地のよい上質なベッドを買って上げる。

さあどうぞ、と愛猫の居場所に置いても、ちょっと匂いを嗅いだだけで、ぷいとまたどこかに行ってしまう。そんなことはたびたびある。一方、ダンボール箱は、宅配の荷物が届き、開梱しているそばから、なになに?といわんばかりに近づいてきて、届いた荷物を出し切る前に、箱の中に入ろうとする。やれやれ、と人間たちは思いながら、猫たちはその箱の中でうとうととし始める始末。

人間たちは、愛する猫たちに尽くしてあげたいといつでも思っている。美味しくて、健康によいご飯はなんだろう、常日頃ネットサーフィンをし、使いやすいトイレはどれ、猫砂はなにがいいだろうか、楽しんでくれる玩具は、居心地のよいベッドは?といつも思案している。

もしかしたら人間たちのそんな強い思いが猫たちにとってお仕着せがましいものなり、猫たちから遠ざけているのかもしれない。気のやさしい猫たちのことだから、そんなことはありえない話ではない。

ダンボールの中で窮屈そうにしている猫たちからの、そんなに手をかけなくても、君からの僕への愛は十分に分かっているよ、いつも気にしてくれてありがとうね、そんな声が聞こえてくるようだ。僕たち人間も、そんな猫たちの声に耳を傾けることができるのなら、猫との暮らしがよりよい、猫たちにとっても、僕たち人間たちにとっても、よりハッピーなものになるかもしれない。

猫たちのそんな声に耳を傾けながら、このコラムを書いていきたいと思っています。

加藤孝司 / かとう たかし

ジャーナリスト。東京浅草生まれ。デザイン、クラフト、アートなどを横断的に探求、執筆。雑誌やウェブなどへの寄稿をはじめ、2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考中。ウェブマガジン「ensemble」の編集長もつとめる。休日は愛猫ジャスパー(ブリティッシュショートヘアの男の子)とともにすごすことを楽しみにしている。

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