猫との暮らしは、きっと人々の生活を豊かにするでしょう。愛くるしい家族がそこにいるだけで、家庭の雰囲気も明るくなります。一方で猫は自尊心が強い動物でもあります。人や犬のように群れず、1匹で生き残ってきたプライドがあるのでしょう。そんな猫と心地よく暮らしていくのにはどんなところに気をつければよいでしょうか。
1.立体的な住環境
猫を飼うのには、垂直方向のスペースがあれば水平方向(床面積)の広さはあまり必要ないといわれます。猫が得意とする、跳躍、高所でのバランス感覚を発揮できるようにキャットタワーを設置したり、家具の配置を工夫しましょう。
2.コアエリアを大事にする
各々の猫は1日の75%を過ごすコアエリアを持っています。コアエリアの周辺に給水所、トイレ、お気に入りのベッドを集めることで、猫にとって心地よい環境になります。
3.猫の数 ≦ 部屋の数-1
猫の最大のストレス要因の1つが過剰な多頭飼育です。猫の数は「部屋の数—1匹」以下に抑えましょう。例えば3LDKであれば3匹までになります。各猫のプライベートが侵害されると、喧嘩やストレス性疾患の原因になってしまいます。
4.トイレビュッフェ
不適切な場所での粗相の原因はトイレにあることが多いです。常に清潔にすることはもちろんですが、トレイの形・大きさ、砂の種類、場所など猫によって好みがあります。複数のトイレを並べ猫に選ばせることでどれが最適か判断する方法があり、これを「トイレビュッフェ」と呼びます。
5.食事の量、時間は一定に
猫の食事管理はオーナーにより管理されます。肥満は猫でも病気のリスクを高めますので、食事の量を計りましょう。また不規則な時間に食事を与えていると、早朝にオーナーを起こしたり、いつまでの食器の前から動かなくなってしまうこともあります。自動給餌器を活用するのも良い選択肢でしょう。より正確な食事管理ができ、自動給餌器からフードがでてくることを学べば早朝に食事をオーナーに対して訴えることもなくなります。
6.偏食をなくす
猫の食事の好みは生後6〜8ヶ月齢以内に決まります。この期間にドライフードしか食べていない猫はウェットフードを食べなくなり、その逆も然りです。将来フードの選択肢を狭めないためにも色々な素材のそして形状のフードを食べさせてあげましょう。
7.ベビースケールを活用
年をとってくると健康面が気になります。猫は11歳からシニアと呼ばれ、人間年齢に換算すると約60歳になります。猫は病気になっても症状を隠すので、客観的に評価できる体重が最も大切なチェックポイントです。人間の赤ちゃん用のベビースケールが10g単位で計れ、猫にもジャストサイズです。
8.マーキング行動を尊重する
猫が椅子や柱に頬を擦りつけているのは、顔から分泌されるフェイシャルフェロモンを付けているからです。周囲に自分のフェロモンを散布することで、安心しています。そのため、いつもマーキングしている場所を洗剤で拭き取ることはしないでください。
9.ブラッシングの前に
季節の変わり目は猫も衣替えの季節。たくさんの毛が生え代わり、そして抜けます。日ブラッシングをする前に濡れタオルで拭いて少し水分を与えておくと、毛が舞い上がるのを抑えられます。
10.猫の行動学を学ぶ
猫は感情を表に出さない動物ですが、注意深く観察すると猫の気持ちがわかるようになります。例えば、尻尾を振るのは犬では喜んで興奮している時のサインですが、猫では反対にイラつきを意味します。猫の行動学を学ぶことで、今何をして欲しいのかを察知したり、猫の基本的な性質を理解できるようになります。
著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み帰国。現在は猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialistsの院長を務めている。ブログ nekopeidaも毎月更新中。