先日、フランスのデザイナーであるロナン・ブルレックさんにデンマークのテキスタイルブランド「kvadrat」での新作テキスタイルに関するインタビューをする機会をいただいた。
ロナン・ブルレックさんは弟のエルワンさんとともにブルレック兄弟として知られる世界的なデザイナーだ。今回「kvadrat」から発表されたテキスタイル「Cnainette」と「Rennes」は、こんなテキスタイルを家で使ったら毎日が絶対楽しくなると想像させてくれる素晴らしい作品だった。
インタビューではこのテキスタイルが生まれた背景についてお話を伺うことができた。それとボクにはブルレックさんにどうしても聞いてみたいことが一つあった。それは彼のインスタグラムにたびたび登場する毛足の長い美しい二匹の猫のことだった。ブルレックさんの自宅と思われる場所で、彼のデザインした椅子の上で優雅に寛ぐ猫。世界的なデザイナーとともに暮らす猫はどんな猫なのか、前々から気になっていたのだ。聞くところによるとその猫は彼のお嬢さんの愛猫で、化粧パフを意味するウペットと二トゥーシュという名前の猫だという。なんでも猫アレルギーのお嬢さんのために、一生懸命探したアレルギーを引き起こしにくい猫種ということで、本当にそんな猫がいるのかとネットで調べてみた。調べるといくつかそんな記事がヒットした。それによると猫アレルギーの人でも飼いやすい猫のことをハイポアレルジェニック・キャットというそうで、猫種としてはサイベリアンという猫がよく知られているそうだ。まったく猫アレルギーを引き起こさないわけではないそうだが、そういう猫も存在するということがなんとなくわかった。
それはさておき、ブルレックさんにどんな猫ライフを過ごしているのか聞いてみて、とても暖かい気持ちになったので、猫とデザインということで、ここで少し書かせていただきたい。
ブルレックさんちの猫はとても遊び好きだそうで、ブルレックさんが絵を描いていると机の上に飛び乗ってきて、時には絵の具が乾いていない描きかけのデッサンの上をお散歩してしまうそう。そうするとせっかく描いたデッサン画が滲んでしまうこともあるという。作品としては売り物にならなくなってしまうが、それでもブルレックさんはそれも作品の味として気に入っているというエピソード。なんとも愛に溢れた人だ!とその話を聞いて感動したことはいうまでもない。
インタヴュー終了後、サインをお願いしたボクにブルレックさんがサインのみならずペインティングをしてくれたのが、写真のもの。
これは「ロワゾー」というブルレックさんがデザインした鳥のオブジェで、生木の手触りがとても気持ちがよい作品だ。先ほどのエピソードではないが、動物へのブルレックさんの優しいまなざしが感じられる作品だと思うのだ。
加藤孝司 / かとう たかし
ジャーナリスト。東京浅草生まれ。デザイン、クラフト、アートなどを横断的に探求、執筆。雑誌やウェブなどへの寄稿をはじめ、2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考中。ウェブマガジン「ensemble」の編集長もつとめる。休日は愛猫ジャスパー(ブリティッシュショートヘアの男の子)とともにすごすことを楽しみにしている。